何か困った問題が出されたときに、それを照会する役割も重要です。
たとえば「ある国の政府だけがこんなこと言っているのでは困る」というようなこと―具体的には、アメリカ政府が暗号の輸出入をコントロールしているのはまずいのではないかというようなことIを言ったりするのです。
インターネットの重要課題個人の視点を共有するインターネットのテクノロジーが発展していくときに重要なのは、そのテクノロジーの発展と、それを利用していく人間社会が遊離しないようにすることだと思います。
これはよく、サイバースペースと現実社会は協調することによって、ともに成長していく、というように表現されることもあるのですが、この章ではそのなかでいくつかのポイントを考えていきましょう。
インターネットはそもそもは、蓄積されたデジタル・データを交換・共有するための基盤ですが、人間がもっている財産としてのデジタル・データにどんなものがあるかと考えると、それは文字であったり、画像であったり、映像であったり、音であったりします。
これらはすでに蓄積されたものはもちろん、ビデオカメラその他のデジタル・テクノロジーが進歩していくにつれて、保存とか蓄積という過程を経ず、じかにインターネットで交換・共有される可能性がふえてきています。
それは「感覚の共有」と言えるかもしれません。
いわば人間がもっている五感、とくに視インターネットの重要課題覚、聴覚といったものをそのまま、地理的な制約を超えて共有するような可能性もあります。
現にいま自分が見ている画面、自分が聴いている音、こうしたものをそのまま大規模な人と共有するということがインターネットでは実際に行われています。
もちろんこうした表現は、従来のメディアでは普通の個人には許されませんでした。
しかしそれは明らかに個人の表現として重要ですし、それが自由に共有できるというのは、人類にとって大切なことになるのではないかという気がします。
こうして、デジタル・データを交換する基盤としてのインターネットには、多くの期待がもたれるのですが、しかし大きな誤解もあるようです。
インターネットは、確かに普遍的にデジタル・データの共有と交換ができるインフラストラクチャーですけれども、デジタル・データによるコミュニケーションに対するさまざまな期待すべてがインターネットにかぶさってくるということは好ましくないと思います。
私はデジタル・データによるコミュニケーションの必要性が、インターネットですべて満たされるというぐあいに一元的にものを考えるのはきわめて危険ではないか、と思っているのです。
今後のいろいろなデジタル技術が発展することを視野に入れれば、メディアとしてのインターネットと、ほかのメディアとの協調、補完関係というものをこそ、考えていかなければいけないでしょう。
たとえば二時間のビデオをインターネットで流すというようなことを考えると、それは現在のインターネットにとっては、非常に厳しい話です。
これをいま、インターネットで見るということが本当に重要かどうか、こういうことを考えていかなければいけません。
ビデオ・オン・デマンド(個々の視聴者が見たいと思うビデオをいつでもすぐに提供するサービス)という技術が、以前から研究されていますが、それをインターネットで実現しようという考え方がよいのかどうか。
私は個人的には、二時間のビデオが、インターネットで見ることができることは、人間の知識にとってそれほど重要なプラスになるとは思いません。
それよりも、―秒間あたり少ないコマ数でずっと短時間のビデオクリップと呼ばれるようなものがインターネットに乗ることのほうが人間の知識にとって非常に役に立つだろうと考えています。
たとえば新聞や雑誌、百科事典などのなかの絵がほんの三秒間動くだけでも、本当に多くインターネットの重要課題の知識と情報を人間は得ることができるのではないでしょうか。
そしてそれはいまのインターネットでも簡単にできることですし、自由に蓄積されるし、簡単に交換できる。
誰でも恩恵を受けられるということが、まず第一に考えられるべきではないか、そのような技術から出発して進めていくべきではないか。
すべてをインターネットでやる必要はないのであって、ほかのメディアとの複合的利用が進むほうがはるかに意味があります。
コンサートなどにしてもそうであって、ただ中継するだけなら、無理をしてインターネットで流しても、テレビ中継となんの違いもなく、ほとんど意味はありません。
世界を結んだ双方向性を活かして、たとえば世界各地の聴衆からのメッセージに反応しながらコンサートを構成していくなどの工夫がなければ、と思います。
ただし、インターネット・プロトコルという技術に努力を集約して相互運用性をあげ、開発の効率をあげる可能性は追求すべきだとは思います。
つまり、長時間のビデオ配送をインターネット・プロトコルで行うことに、技術的に大きな意義はあるのです。
ただこれが、ほかのインターネットの部分と同じネットワークである必要は必ずしもない、ということです。
ユービキタス・コンピューティングインターネットというのは、個人がみずからの責任で、自由に情報を公開し、交換し、共有することができるための環境をつくっていくということに非常に重要な意義があるわけで、そうであれば、どんな人でも、どんな場所にいても、どんな状況にあっても、そうした環境が享受できるような技術に挑戦していかなければならないと思います。
そのためのキーワードとして、「ユービキタス・コンピューティング」あるいは「ユービキタス・インターネットワーキング」という言葉を考えてみたいと思います。
「ユービキタス」というのは普遍性、遍在性、要するに遍くどこにでも存在するという意味の言葉です。
このような、誰でもがどこにいてもどんなときでも、デジタル・コミュニケーションの基盤を享受できるような環境をつくるためには、きわめて身近なことから、非常に新しい技術までが必要だと考えられます。
普及のステップいちばん初歩的な問題としては、インターネットの基盤、そしてコンピュータ(あるいはインターネットの重要課題それに代わる電子機器)の普及が挙げられます。
つまり、インターネットにつなぐ回線料金やコンピュータが、非常に高価だったり、あるいはインターネット用のソフトウェアが導入しにくかったり、コンピュータが身近に置きにくかったりしてはいけないということです。
回線の問題はなかなかむずかしく、あとでまたふれるとして、機器の普及については、いまは非常によい傾向が見えています。
というのは、インターネットはそもそもコンピュータなどのデジタル情報機器を人間の活動に貢献させるためにたいへん役立っている環境なわけですが、そのインターネットが広がっていること自体によって、いま、インターネットがテクノロジーと人間の環境を結びつける役割を果たしているように見えるのです。
具体的には、まず、パーソナル・コンピュータなどの情報機器が発達し、より充実もた利用を可能にするためにインターネットが発展してきました。
その一方で、これまでコンピュータにあまり嫁がなかったような人が、インターネットを使うためにコンピュータを手に入れようとしはじめているのです。
その二つの動きが相乗効果を及ぼして、それぞれにたいへん急速に普及しつつあります。
これから大切な「モーバイル」の技術面ではどうでしょうか。
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